読んで楽しむ──江戸庶民史料・デジタル資料等の紹介

 「読んで楽しむ」は、毎回、特定の庶民史料を取り上げて読んでいく講座です。テキストは往来物倶楽部デジタルアーカイブスのデジタルコンテンツ(会員は無料ダウンロード可能)を使用します。また、これらの史料の翻刻(活字版)や影印版(写真版)等の関連書籍のほか、ネットで無料で読むことのできるデジタル画像なども適宜紹介します。

テキストを読みながら動画を見る(会員専用ページからログイン)ことで理解が格段に深まります。

 舎主は、往来物(寺子屋等で使われた読み書き教材)など江戸時代の庶民史料の研究歴30年、庶民史料のコレクションも日本有数です(特に往来物は最大規模)。約1万冊から厳選した多彩なテキストを継続的に読み解きます。原本の魅力を存分にお伝えし、原本入手の秘訣なども伝授します。

往来物講座──毎回一つの往来物にスポットを当てて、丁寧に読み解いていきます。

その他講座──往来物以外の庶民史料(育児書、石門心学書、礼法書、教訓書等)から面白いテキストを選び、読んでいきます。

 以上のようなテキストを毎回1点ずつ読んでいくネット講座(1講座約60分)です。それぞれ資料をダウンロードの上、ご覧下さい。テキストで使用した原本のデジタル資料(往来物倶楽部デジタルアーカイブス)なども特価で提供いたします。


◆江戸樂舎「読んで楽しむ」バックナンバー

*実施月降順。

 

実施月/講座内容

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№069=2022年7月/田子養生訣 でんしようじょうけつ」を読む(江戸の食養生⑦)…尾張藩医の田中家に伝わる不老長生の術を記した養生書。冒頭で「老人科」の重要性を訴え、本書の養生法を広く普及し、「老たるは再び少きに還り、病を郤け、未病を治し、不老長生の寿域に登らしめ…」と志を示し、養生によって身命を長く保つことが忠孝の本であると述べ、顔の血色、頭から手足までの摩擦法、血行の改善法などを具体的に説き、最後に、「修養必用十八段」で養生の具体的実践法18法を示しています。

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№068=2022年6月/養生論(久保謙亨) ようじょうろん」を読む(江戸の食養生⑥)…唐の名医・孫真人(そんしんじん)の養生法や貝原益軒の『養生訓』に基づき日用養生の秘訣を諭した書。まず、田舎では「自然天理に任せる」生活で長寿者が多いのに対し、京都などの都会では「万事自在」「飲食・色慾」「安逸・美服」「多言・妄行」のため多病・早世が多いと指摘し、続いて、長寿になるための「日用禁忌の五要(身を損なう内慾と外邪)」として具体的な心得を平易に説いています。

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№067=2022年5月/延寿養生談 えんじゅようじょうだん」を読む(江戸の食養生⑤)…板木焼失で未刊に終わった『医蹊(いけい)』を大幅改訂した『伐柯編(ばっかへん)』のうち「胎病」「心痛」の趣旨を庶民向けに平易に書き改めた養生書。乳児の保育・養生、また、胎毒による諸病と施薬、また、食積(消化不良)や熊胆等の効能、食生活上の注意、色欲の慎み、服薬中の断食や制限食等の養生法、病人の食事、停食(食もたれ)と傷食(食あたり)の症状・対処法などを諭しています。

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№066=2022年4月/日養食鑑 にちようしょくかがみ」を読む(江戸の食養生④)…石川元混編の庶民向けの食物効能辞典。イロハ引きで全592項目の食物の効能・毒性・禁忌について簡潔に記す。現代人も食すものから、オットセイ(膃肭臍)・オオカミなど、今ではほとんど見る事もできない食材まで色々と出てきて、読むほどに興味が増す史料です。

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№065=2022年3月/養生歌 ようじょううた」を読む(江戸の食養生③)…一橋中納言斉敦(なりあつ)の助言を受けて幕府奥医師の多紀元徳が、安土桃山時代の名医、曲直瀬道三(まなせどうさん)の『養生歌』にならって養生の秘訣を81首の和歌に詠んだもの。養生の総論とも言うべき「大意」と、各論の「飲食」「閨門(性生活)」「起居(日常生活)」の4つに分けて合計81首を掲げますが、今回は「大意」と「飲食」の全文を読みます。該当箇所の翻字(活字化)もしました。開口一番、「程を過ごすは、皆不養生」と教えています。

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№064=2022年2月/養生主論 ようじょうしゅろん」を読む(江戸の食養生②)…「江戸の食養生」の2回目は『養生主論』。全2巻の上巻「保養篇(ほようのへん)」で、「心の持やうの事」「身の持やうの心得」「飲食の心得」「房事の心得」「小児を育つる心得」「総論」の6章に分けて養生の心得と実践法を説いていますが、そのうち「飲食の心得」を通読します。

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№063=2022年1月/養生一言草 ようじょうひとことぐさ」を読む(江戸の食養生①)…今年(2022年)の「読んで楽しむ」はしばらく「江戸の食養生」をテーマに読んでいきます。その第1回は『養生一言草』。幼児から成人、老後までの養生について、衣食住を始め、遊戯・学問・武芸・芸能・医療や心の持ちよう、温泉・旅行・年中行事など幅広い視点で論述した養生論です。

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№062=2021年12月/初学文章抄 しょがくぶんしょうしょう」を読む(3)…今回は3回シリーズの3回目。「初学文章抄」とそれを女性用にアレンジした「女初学文章」を対比して読むことで、「初学文章抄」と「女初学文章」の共通点と相違点を明らかにし、それぞれの往来物の特色は浮き彫りにします。併せて、散らし書きの手紙や関連の書札礼にも触れます。

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№061=2021年11月/初学文章抄 しょがくぶんしょうしょう」を読む(2)…今回は3回シリーズの2回目。「初学文章抄」とその改訂版「初学文章并万躾方」の共通点や相違点を、その内容構成(書状例文/書札礼(書式)/礼法(給仕方・座礼)/礼法(食礼))から検討し、いくつかの記事を対比させつつ読み解いていきます。

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№060=2021年10月/初学文章抄 しょがくぶんしょうしょう」を読む(1)…作者不明で、武家の書札礼と礼法の基本を記した往来物。全3巻1冊。江戸前期に普及した寛永11年刊『初学文章并万躾方』の原型となったもので伝本がわずか。今回初板の寛永6年板に次ぐ寛永7年板を小泉が入手したため3回シリーズで詳しく紹介します。今回はその1回目で、目録に沿って概要を解説します。

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№059=2021年9月/幼今川 おさないまがわ」を読む…八島五岳作。天保12年刊。『今川状』に準えて綴った教訓。冒頭の1条「一、今川状の跡をおひて幼き者を導き示す制詞の条々」は本書の首題なので、これを除くと、「一、人生れて六、七歳の頃までは父母の膝の下にありて、何事をも弁ざれば、詮方(せんすべ)なし…」という第1条以下合計28カ条の条々で、手習い・学問、孝・忠、夫人の貞操、正直、順道、議論・勝ち負け、急ぐ時の心得、堪忍、多言など日常の生活心得や処世訓を説いています。

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№058=2021年8月/幼孝経 おさなこうきょう」を読む…八島五岳作。天保15年刊。『孝経』の教えを敷衍した往来物。『孝経』の設定(孔子と門人の問答)になぞらえて、翁と子供の対話形式で「孝」とその具体的な実践など庶民子弟の心得を説いています。本文には適宜割注を添えるほか、頭書にも本文を絵解きした教訓画や要語の語注を掲げ、平易な内容です。次回も五岳の往来物(『幼今川』)を取り上げる予定です。

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№057=2021年7月/孝経賤が枝折 こうきょうしずがしおり」を読む…中村忠亭作。寛政元年熊本ほかで刊行。『孝経』庶人章の教えをもとに庶民における孝のあり方と家業出精、法令遵守など庶民が守るべき心得を委しく述べたもの。同じ庶人章を手習本に仕立てた頼杏坪の『勧孝諭俗要言』と対比しながら冒頭部を読みます。

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№056=2021年6月/池上詣 いけがみもうで」を読む…『池上詣』(書名は仮称)は、「此程風与(ふと)おもひ立、池上へ参詣いたし候…」で始まる短い女文形式で、池上本門寺の荘厳な風情や碑文谷の御堂、また、「瀟湘八景」に見立てた品川の風趣を述べた往来物です。当時の風景図を現代の写真と対比させて紹介します。

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№055=2021年5月/子もりうた」を読む…18世紀後半に知真庵義観が著した育児書・教訓書。「子もりうたをば、うたふて聞しや、うたへばよいよい、よい子になるぞ、其子何処にと、たづねて見れば、何所(どこ)に居るやら、無明の闇で、ありかしれねど、余所(よそ)ではないぞ…」のように七七、七七と続く調子の良い文章で綴り、正直・倹約・堪忍などの心得を交えつつ、育児が現世の安楽や来世の往生につながると諭す。

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№054=2021年4月/教民の詞 きょうみんのことば 」を読む…作者不明で、慶応3年に萩藩が出版した往来物・教諭書。庶民道徳や処世訓を七五調で綴ったものです。№051の『諭俗要言』と同様に、中国宋代の思想家・陳襄(1017-80)の教諭書を平易にリライトしたものですが、文章は大幅に異なり、両者を比較すると面白いでしょう。跋文は吉田松陰の兄、杉修道(民治)で、各村に一部ずつ配布されたものです。

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№053=2021年3月/老婆愚言 ろうばぐげん 」を読む…岩槻藩儒の児玉南柯が、領民(主に童蒙)教育の為に認めた6カ条の教訓で、この書名で現存唯一ですが、『児玉南柯日記』の現存分の最終巻、第53冊(己卯暦=文政2年)の11月15日に「国字愚言六条」として全文が引かれています。『六諭衍義大意』を模して編まれたもので、役人尊長、父母への孝養、兄弟友愛、朋友信義、夫妻和順、遊興の慎みなどを諭しています。

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№052=2021年2月/食禄箴 しょくろくしん 」を読む…全回に続き頼杏坪の往来物を読みます。『食禄箴』は、「禄を食(は)む者の箴(いましめ)」、つまり、君禄を頂く家臣の心得です。武家子弟の教訓書で、現代なら公務員服務心得と言うべきものです。本書を読むことで、現代の政治家や官僚の体たらくを痛感せざるを得ません。公務員=「全体の奉仕者」としての心構えを学びましょう。

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№051=2021年1月/諭俗要言 ゆぞくようげん 」を読む…全回に続き頼杏坪の往来物を読みます。『諭俗要言』は、中国宋代の賢人陳襄(チンジョウ、1017-80)が配下領民を啓蒙するために編んだ教諭文に、杏坪が平易な和解(ワゲ)を加えたもので、家庭内の道徳や、公民としての本分・心得・相互扶助などを諭しています。全文を読みつつ、地方行政官として奔走していた頃の杏坪の心境を推し量ってみましょう。

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№050=2020年12月/勧孝諭俗要言 かんこうゆぞくようげん 」を読む…今年の10月末に発見された頼杏坪の往来物『勧孝諭俗要言』は、頼杏坪が、広島県三次市に現存する役宅「運甓居(うんぺききょ)」で著し、出版した紛れもない三次の往来物です。三次ならず、備後国における出版物としても新発見の刊本のため、今回から3回にわたって頼杏坪の往来物に迫ります。

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№049=2020年11月/玉のはやし たまのはやし 」を読む…少年時代に一文不通でしたが、奉公先で番頭から頂いた「いろは」手本から読み書きを始め、ついには江戸有数の書家となった猪瀬尚賢が手掛けた20点以上の刊本往来物の最初の作品です(天保15年刊)。手跡稽古する者の心得を孝を基本に説いた教訓で、後に随所に改変を加えた文久2年刊『玉のはやし(寺子教訓瓊林 テラコキョウクンタマノハヤシ)』も出版されました。資料には天保板の全文を翻字し、動画では文久板の全文を音読しています。両者を読み比べてみましょう。

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№048=2020年10月/身体の階始め しんたいのけたはじめ 」を読む…明治8年刊。047『健全のさとし』の直後に刊行されたもので、より医学的な知識を盛り込んだ教科書です。総論・脳・心・肺・脾・肝胆・胃・腸・腎の9項に分けて、身体各部の名称・形状・機能等を略述しています。巻頭に「身体内部略図」2葉を掲げ、脳の機能や、血液循環と内臓の関係、食物の摂取から排泄までの流れなどを説明しています。

*今月は「聴いて楽しむ」が中止となったため、「読んで楽しむ」を2回分にしました。

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№047=2020年10月/健全のさとし けんぜんのさとし 」を読む…明治6年刊。明治になって「健康」という言葉が往来物にも多く登場するようになりました。本書はその先駆的なもので、健康管理・養生についての心得を記した教科書です。志の成就の土台である健康の重要性を強調し、そのための心得を食物・食生活・喫煙・飲酒など20カ条に分けて説いています。巻末附録の「猥リニ薬ヲ服スベカラザル事、并ニ医者ヲ撰ムベキ事」も、現代にも通じる教えです。

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№046=2020年9月/身体往来 しんたいおうらい 」を読む…身体に関する基本語彙と若干の心得を綴った往来物です。「五体(頭・両手・両足)」各部の名称や、種々の分泌物・排泄物である「五腋」、「五臓六腑」等について述べ、最後に人身を天地に譬えて、身体の健康こそが斉家であり、米穀・金銀を貪る者は短命になるとして、質素・倹約、飲食・房事の節制、平常心の保持により天寿を全うすべきことを諭しています。身体関連語彙160語以上を載せていますが、現代人でも案外難解なものです。

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№045=2020年8月/諸礼大学 しょれいだいがく 」を読む…田島養元が著した江戸後期の礼法関係の往来物。初板本は享和3年刊『礼道楷梯』と目されます。本書は、三浦久之丞(ひさのじょう、庚妥つぐやす)作、享保8年刊『便用謡』のうち、8歳以後の諸礼躾方を説いた「躾之端」を丸々引用したもので、最も流布したものは、前半を「食礼大学」、後半を「諸礼大学」と言います。今回は、このうち前半部「食礼大学(初板本「食礼楷梯」)」の全文を読み、その基になった『便用謡』にも触れます。

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№044=2020年7月/遊女大学 ゆうじょだいがく 」を読む…西村定雅作、竹原春泉斎画、文化4年序・刊『遊女大学』は、享保元年刊『女大学宝箱』の体裁と内容にならって、遊女に必要な教養と心得を綴った洒落本・往来物です。全18カ条の条々と後文からなり、遊女や芸妓の本情・風情・見識や接客姿勢、遊芸の精進、化粧・身だしなみ、また、これらの奉公人に対する慈悲かけや奉公人教育、「遊女七去」の法など親方の心得までを説いています。なお、今回の画像は、三次市立図書館の往来本アーカイブをご覧下さい。

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№043=2020年6月/善悪種蒔金生木 ぜんあくたねまきかねのなるき 」を読む…江戸後期に普及した「金のなる木」の教えを説いた往来物である本書は、人間にとって最も大切な「しやうじ木(正直)」を根幹に、「じひふか木(慈悲深き)」「よろづ程のよ木」「ゆだんのな木(油断の無き)」「かないむつまじ木(家内睦まじき)」など10の徳を教えたものです。金のなる木の多彩なバリエーションも紹介します。

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№042=2020年5月/寺子制誨之式目 てらこせいかいのしきもく 」を読む…大坂の寺子屋師匠・笹山梅庵が元禄8年5月に綴った寺子屋規則を書道手本にしたもの。無筆の恥を強調する第1条から始まる37カ条と後文から成る教訓で、寺子屋内での学習態度を始め、師・親・友人等との関わりにおける諸教訓にも説き及ぶ。全国各地の寺子屋規則の模範とされ、同文または改編本など無数の写本が伝わっています。

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№041=2020年4月/武田手習状 たけだてならいじょう 」を読む…武田信玄が永禄元年(1558)5月に書き記した教訓書に仮託して、手習いの心懸けを中心に日常百般の教訓を説いた往来物。伝本が少なく、作者の詳細も不明の『武田手習状』(恐らく甲州板)。手習いの心得を合戦に譬えて説く趣向はオリジナルの『手習状』とそっくりですが、「人は一言を出(いだ)して其の胸中を量(はか)る」などの金言名句が随所に煌(きら)めいています。

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№040=2020年3月/農家手習状 のうかてならいじょう 」を読む…男性向けの『手習状(初登山手習教訓書)』を模した農業系の「手習状」ですが、前回の『農業手習教訓書』とは異なる往来物です。こちらは仙台板で何度か刊行され、ある程度の普及を見ました。手習いよりも農民生活の心得と農業関連の用語を多く盛り込んだ文章を、語呂の良い七五調で綴るのが特徴です。勤勉な農民生活を心懸け、「人々しく(人並みに)」生きる大切さを教えています。

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№039=2020年3月/農業手習教訓書 のうぎょうてならいきょうくんしょ 」を読む…『手習状(初登山手習教訓書)』を模して書かれた農業系の「手習状」ですが、手習いよりも農民生活の心得が中心です。作者は、米沢の普済寺5世住職の栄岳で、彼が自費出版し無料で配布しました。時は天明の大飢饉の最中でしたが、農業が国の基本であることを諭し、日々の指針としての四計を示して「計画則実行」の勤勉な生き方を教えています。米沢で刊行された田舎板のため伝本が極めて稀ですが、今回はその全文を読みます。

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№038=2020年2月/女手習状(享保17年) おんなてならいじょう 」を読む…男性向けの『手習状(初登山手習教訓書』にならって女性向けに手習いの意義や心得を説いたもの。厳密にはいくつかの系統に分かれますが、享保17年板は刊記が明らかな最古本で、この往来物の始祖となった系統です。「心ほどの世を経る」と人生を達観した教訓も含み、現代人も玩味したいものです。

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№037=2020年1月/孝行文章 こうこうぶんしょう 」ほかを読む…江戸後期、久留米の手習師匠および門人が上梓した手習本3点(孝行文章・手習肝要記・書筆策励記)を読みます。作者は筑後国浮羽(うきは)郡田主丸(たぬしまる)村(現・福岡県久留米市)の手習師匠、山田得之進で、他の伝本が知られぬ極めて珍しい田舎板です。

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№036=2019年12月/庄屋日記 しょうやにっき」を読む…現存唯一で、流布本『庄屋往来』の先駆けと考えられる往来物「庄屋日記」は一部異同があるが『庄屋往来』ほぼ同様で、庄屋子弟に庄屋に必要な教養(用語)と心得を教えた往来物。現存本は数点であるが、諸本との異同にも触れながら、全文を読みます。

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№035=2019年11月/喜撰往来 きせんおうらい」を読む…最近発見の製茶業に関する唯一の往来物(茶道に関する往来物は『喫茶往来』『本朝茶経』などがある)。全750字の短い文章ながら、茶の効用、宇治茶の歴史、製茶の流れや保管法、取引上の諸知識や帳簿の記録や販売など、実際の業務に関わる内容が多いのも特色。筆者は栂尾の製茶業に関わる14歳の少年。
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№034=2019年10月/草津温泉往来 くさつおんせんおうらい」を読む…往来物の作品だけでも約60点を著した十返舎一九。その中でも興味深い記述に溢れた『草津温泉往来』。高崎~草津の沿道と草津温泉の名所・旧跡・名湯・名産品など旅行ガイドブック並みの情報が満載。参考資料として幕末~明治の草津温泉全景図各種と日本全国東西温泉番付も収録。
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№033=2019年9月/随所往来 ずいしょおうらい」を読む…最近発見された『幼童教種草稿』は、明治初年の下野国佐野地方の手習師匠の直筆本だが、その中から、下野とりわけ佐野地方の物産や織物業に関する「随所往来」を取り上げる。織物の規格や相場、また、工夫次第で得られる利益など経営面にも触れる点で近代的な様相を帯びる点で異彩を放つ。
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№032=2019年8月/道中往来(禿箒子作) どうちゅうおうらい(とくそうし)」を読む…『道中往来』と称する往来物にはいくつかあるが、禿箒子作、安永5年刊『道中往来』は、『商売往来』の文言に似せて、旅行心得全般を述べたもの。旅支度から旅行中の病気や怪我、詐欺・盗難に対する用心など、江戸の旅を彷彿させる記述が満載。
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№031=2019年7月/塩浜実語教 しおはまじつごきょう」を読む…主に江戸後期、周防国の瀬戸内海沿岸で使用された往来物で、同地域の製塩業を扱った貴重史料。『実語教・童子教』の文言に似せて綴った「塩高故不貴。以有利為貴。浜肥故不貴。以有実為貴」で始まる漢字5字1句を基本とする合計218句で製塩業者の生活心得や実務上の基本を記す。労使関係や生産調整などにも触れる異色の産業科往来である。
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№030=2019年6月/婚礼往来 こんれいおうらい」を読む…江戸時代の婚礼の要点を述べた往来。冒頭で、婚姻の大切さや分限に応じた婚礼儀式について述べ、続いて「結納」「嫁入」「婚礼」「見参」の順に、身分の違いにも触れながら式礼・膳の次第などについて比較的詳しく説く。
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 №029=2019年5月/さざれ石 さざれいし」を読む…長谷川妙躰の初期の女筆手本の一つ、正徳3年刊『さざれ石』は、時候の手紙や用件の手紙など、いくつかの例文を散らし書き(一部、並べ書き)にした女筆手本。メリハリのある文字や糸を引く様な連綿体など、妙躰流の特色をよく示した優雅な書道手本で、女筆手本特有のくずし字や表現、また、散らし書きの読み方などを学ぶ。
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№028=2019年4月/女実語教・女童子教 おんなじつごきょう・おんなどうじきょう」を読む…江戸庶民に広く知られた『実語教・童子教』になぞらえて女性の心得を説いた居初津奈の『女実語教・女童子教』は、元禄8年に津奈自筆・自画の初板本(絵入り女筆手本)を先駆として約30種出版された代表的な女子用往来。今回は初板本の全文を読み、さらに関連の文献も紹介。
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№027=2019年3月/泰平往来 たいへいおうらい」を読む…幕府の正月行事の有様や、徳川将軍家の威光と余沢、さらに江戸府内の範囲や繁栄ぶりを記した往来物(伝本は全国に数本の稀書)。江戸後期の『御江戸年中往来』も紹介しつつ、その特色を説明。
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№026=2019年2月/寺子往来 てらこおうらい」を読む…『商売往来』の作者、堀流水軒が著わしたもう一つの著名な往来物である『〈堀氏〉寺子往来』は、「用文章」「沽券状」「預り証」「諸請状」「寺子教訓書」「船由来記」からなる往来物。このうち、寺子屋に通う子供の心得を説いた「寺子教訓書」は、後に『通俗教訓往来(教訓往来)』として多くの板種を生み、後世に多大な影響を与えた。
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№025=2019年1月/商売往来 しょうばいおうらい」を読む…元禄~享保期にかけて約20種もの往来物を著した堀流水軒の代表作といえば、紛れもなく『商売往来』である。産業科往来の先駆であり、他の職業別の往来物に甚大な影響を与え、『商売往来』とその類書で優に200種を越す。今回は約1050字の全文を音読し、その意義についても触れる。
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№024=平成30年12月/てみやげ」を読む…小町玉川最後の著作『てみやげ』では、まず、出産が人為ではなく、子供が天からの預かり物であることを強調した上で、子供の喧嘩で我が子を戒めることや、人間の死と向き合わせる重要性を説き、「叱る前に誉める」など7カ条の心得を掲げた。

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№023=平成30年11月/自修編 じしゅうへん」を読む…50歳から中風と戦いながら晩年を精力的に過ごした漢学者・小町玉川の著作。上総・下総など関東各地で平易な教えを説いた晩年の講話録。人の善悪・一生に決定的な影響力を持つ幼児期を「童習、心為る」と端的に表現し、この時期の親(主に父親)の姿勢を諭した。

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№022=平成30年10月/微味幽玄考 びみゆうげんこう」を読む…江戸後期の農民指導者、大原幽学の主著『微味幽玄考』は門人の学習用に書かれた性学のテキストであるが、そのうち誕生から女子13歳、男子15歳までの詳細な発達教育論を展開した「子育部」を読む。幼児の心身の発達をつぶさに観察した幽学が「才走り」を避ける育児の秘訣を説く。
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№021=平成30年9月/五倫訓(礼学童蒙必用) ごりんくん(れいがくどうもうひつよう)」を読む…大館天涯作、天保7年(1836)刊『五倫訓』は修身斉家の要諦として礼学(礼儀・威儀兼備の礼法)と五倫を諭した教訓書。付録の「礼学童蒙必用」で、「数え2歳からは、毎朝、母が子供を抱きながら両手を合わせ、父に挨拶することを教えよ」と説くが、今回はこの付録を読む。
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№020=平成30年8月/翁問答 おきなもんどう」を読む…中江藤樹作。寛永18年(1641)初稿、没後門人の校訂を経て慶安3年(1650)初刊(慶安2年板は海賊版)。天君と称する老師と門弟の体充(ていじゅう)の問答に仮託して綴った教訓。「胎教」の重要性をいち早く説き、子育ての根本が徳教にあることを強調した。
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№019=平成30年7月/武小学 ぶしょうがく」を読む…自ら「止戈学士」と称した会津藩士・兵法家の伊南芳通が貞享3年(1686)に著した『武小学』は近年まで詳細が不明であったが、小泉が原本を発見した。冒頭に「教育」篇を掲げるが、育児書での「教育」の用例では最も古い。徹底した修己と武人教育を説く『武小学』の教育論の要点を読む。
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№018=平成30年6月/日新館童子訓 にっしんかんどうじくん」を読む…会津藩5代藩主・松平容頌が儒者・神道家たちの協力を得て執筆した後、幕臣・屋代弘賢の校訂を経て文化元年(1804)刊。藩の要職者・日新館関係者のほか藩士全員に配られた。全て日本古今の逸話で、上は神・天皇から下は農工商までの75話を集めるが、うち19話は会津藩領の実話。
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№017=平成30年5月/初学文宗 しょがくぶんそう」を読む…尾張藩初代・徳川義直最晩年の啓蒙的著作。慶安3年(1650)作で未刊。冒頭に胎教から70歳までの随年教法あるいは生涯指針の大要を説く。短文ながら為政者の撰作であり、近世初期の年代別教育論として注目される。
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№016=平成30年4月/六諭衍義小意 りくゆえんぎしょうい」を読む…中村三近子(平吾)作。享保16年(1731)刊。『六諭衍義大意』を敷衍した往来物。巷間に流布していた『大意』の尊さを童蒙に教えるために、『大意』の付録として編んだもの。庶民生活上の卑近な具体的例に結びつけるなど、『大意』よりも平易に説くのが特徴。
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№015=平成30年3月/六諭衍義大意 りくゆえんぎたいい」を読む…享保6年刊『〈官刻〉六諭衍義』とともに徳川吉宗の命によって庶民教化用に編まれた官刻の往来物。編者、室鳩巣の序に、庶民の実情に合わない「律例(法度の箇条)」と「古人の事跡」を省き、その「大略をとりて、和語をもて、是をやはらけ」たと述べる。基本文献である本書を通読する。
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№014=平成30年2月/武教全書講録 ぶきょうぜんしょこうろく」を読む…吉田松陰『武教全書講録』のうち「子孫教戒」にも武家女性のための女学校構想が見られる。本書は山鹿素行の『武教小学』の講義録(『武教全書』の巻頭「武教小学」以外の記述がないため、事実上『武教小学講録』と言うべきもの)。慶応4年(1868)に松下村塾刊行。
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№013=平成30年1月/女学校発起之趣意書 じょがっこうほっきのしゅいしょ」を読む…天保8年(1837)、下級幕臣で増上寺領御霊料(現在の目黒区・世田谷区~川崎市)地方役人の奥村喜三郎の私家版で、女性風俗の乱れを防ぐ女学校の設置を呼びかけた。「女学校」の語を冠した最初の著作で、徳育中心の良妻賢母主義の女子教育の先駆として注目される。
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№012=平成29年12月/女書翰初学抄 おんなしょかんしょがくしょう」を読む…奈良絵本作家、女流書道家の居初津奈が1690年に著した女子用往来。四季時候の手紙など57通を収録。詳細な頭書注釈を施すほか、巻末の女性書札礼は明治初年まで影響を及ぼした。津奈の事蹟を示す唯一の記事である序文に、京への憧れが横溢する。
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№011=平成29年11月/女諸礼綾錦 おんなしょれいあやにしき」を読む…北尾辰宣作、1751年刊行。1660年刊行の『女諸礼集』を基本に『女重宝記』の要素を盛り込んで改編。後続の暁鐘成作、1841年刊『新増 女諸礼綾錦』や、池田東籬作、1843年刊『袖玉 女諸礼綾錦』の模範となった庶民女性向け礼法書を味わう。
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№010=平成29年10月/女初学文章 おんなしょがくぶんしょう」を読む…京都の歌人、和田宗翁が著し、大津の女流書道家、窪田やすが書した女筆手本。頭注を施す最古の女子用往来であり、女用文章・女筆手本の先駆。極めて異例な散らし書きの弔状を含め、散らし書きの仮名消息を味わう。
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№009=平成29年9月/続女大学 ぞくおんなだいがく」を読む…渡辺其寧作。1832年頃、京都で刊行されたが、間もなく『女大学宝箱』の類板訴訟で改題を余儀なくされた女子用往来。一見『女大学宝箱』に酷似するが、結婚前の女子教育、特に読み書きの重要性を強調した点で、似て非なる異種女大学であった。
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№008=平成29年8月/女大学宝箱 おんなだいがくたからばこ」を読む…作者不明、1716年刊行。女性差別、封建道徳の象徴とされる「女大学」の初板本。明治初年まで何度も刊行された初板本により「女大学」18カ条および後文を読み、付録記事にも注目しつつ、『女大学宝箱』の全体把握を試みる。
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№007=平成29年7月/女九九乃声 おんなくくのこえ」を読む…京都の神道家、大江文坡作、1787年刊行の女子用往来。 九九の読み声と教訓歌で女子の心得全般を説く。女子に算数の基礎を教えた唯一の往 来物。女子に対する数学教育の重要性が一般認識される100年以上前の先見的著作。
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№006=平成29年6月/下民小学 かみんしょうがく」を読む…上総国大鷲村(現・君津市)の知足庵作、1815年刊行の往来物。農民心得を説いた全33カ条と後文の冒頭で「妻を娶る心得」から説き始め、一家の主として、妻や妻の実家に対する気配り、育児から処世訓全般に及ぶ教訓を展開。後に『農家大学』『民家学要』と改題・再刊。
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№005=平成29年5月/摂河往来 せっかおうらい」を読む…作者不明で、元禄11年(1698)頃刊行の異色の往来物。摂津在住者と河内在住者でやりとりする往復2通の書状形式で、両国の年中行事・名所・名物のあらましを記す。ストレスの多い都会よりも、人間らしい田舎暮らしを勧める「都鄙論」が注目される。
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№004=平成29年4月/在郷童教訓書 ざいごうわらべきょうくんしょ」を読む…美濃国郡上郡二間手村(現・郡上市)の手習師匠が1855年に著した往来物。上下2巻で、上巻には子供の悪行に関する戒めなど10カ条、下巻は全文1カ条で、飲食・飲酒・色欲に関する養生心得を詳述する。地方色豊かな独自の往来物として興味深い。
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№003=平成29年3月/子供教草 こどもおしえぐさ」を読む…幕末の豪商・蘭学者、火薬研究者として知られる中居撰之助(中居屋重兵衛)が編集し、1854年に自費出版した童蒙教訓書。ある伊勢商人が、江戸本郷の商家へ奉公に出した息子に宛てた手紙を丸々収録。父が息子に示した遺書同然の手紙は今なお胸を打つ。
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№002=平成29年2月/浜庇小児教種 はまびさししょうにおしえぐさ」を読む…九十九里の手習師匠、今井経山が1858年に著した往来物。九十九里の漁村や漁の様子を活き活きと描きつつ、鰯漁で潤い奢侈に流れるバブリーな世相を戒め、子供には学業を、親には育児心得を示したが、その本意は親の意識転換にあった。
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№001=平成29年1月/養育往来 よういくおうらい」を読む…京都の書家、小川保麿が1839年に著した往来物(おうらいもの*読み書き教科書)。子供に育児の基本を教えた本書は、言わば、親子で読む「家庭教育読本」であった。育児に関する秘訣や金言を集約した本書に、江戸子育て論の標準を見出す。


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